街はアートの夢を見る

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六本木アートナイト。存在は知ってたけど、そういえば行ったことがなかったので、行ってみた。

昼間は調布で友達とぐだぐだ飲みながらしょーもない話をしたり蚤の市をだらだら散歩したりしていたので、六本木に到着したのはだいたい19時頃。地下鉄の駅を出ると、カラフルなパンフレットを持った参加者たちが既に大勢行き来していた。

とりあえず東京ミッドダウンを起点とする。街中でよく見かける黄色いタクシーが宙に浮いていて、グオングオンと唸りながらカラーコーンのトゲトゲをバチバチと光らせている。タクシーのオバケ。タクシーモンスター。その様子を食い入るように眺める観衆たちの姿。アートナイトが始まった。

街のあちこちにインスタレーションやパフォーマンスが散りばめられているから、ひたすら歩く。ガイドブックのマップを見ながらあちこち巡る。あまり六本木の街に慣れていないから、何度も立ち止まってガイドブックを開く。でもガイドブックが黒地のデザインだから暗い場所だとマップが見えない(笑)。
だんだん面倒になって、マップを無視して勢いで探検し始める。

金持ちの外国人と夜遊び女、どっかの若社長とアートファンがそれぞれの思惑で六本木の夜を歩く。そんなに広くない六本木の裏路地を色んな格好の人たちが行き交う。この人は普段どんな仕事をしているんだろう。こいつらどっから来たんだろう。通りを真っ赤な外車が走っていく。耳障りなエグゾースト音が響き渡る。
だんだんと終電の時間が近付いてきて、駅へ向かい始める人と、朝までいると決めた人たちに二分され始めた。

日付が変わって終電が終わって、夜が深まって参加者たちの元気がなくなってきても、アートナイトは淡々と続く。力尽きてそこら辺の芝生で寝始める人が出始める。意外と寒い。相変わらず怪しげな機械音や胡散臭い効果音、たまに遠くから聞こえる酔っ払いの奇声や救急車のサイレンは鳴りやまない。六本木ヒルズのステージには「だんだんだんだん馬鹿になる。だんだんだんだん馬鹿になる。」という言葉が繰り返し響き渡る。

気付けば、しばらく力尽きてた。ほんの少しだけ空が明るくなってきた。24時間営業の店でラーメン食べて、コンビニでビール買ってその場で飲む。寒い。国立新美術館へ移動。光と色と音と揺らぎ、その周りでぐったりしている人たち。森美術館の企画展を見ようと思っていたけど、さすがに頭回んないからもう良いやってなった。

朝6:00、再び六本木ヒルズ。日本フィルハーモニー交響楽団のラジオ体操に参加。ぞろぞろと人が集まってくる。みんな今にも立ったまま寝そう。トランペットの音がヒルズに響き渡って、DNAレベルで刻み込まれた旋律に合わせて集団がユラユラと踊り始める。キッチリ第2体操まで走り切った。謎の達成感。さ、帰ろ。

2018年。初めて参加した六本木アートナイト。普段あまり馴染みのない六本木の街だけど、あちこち歩き回っているうちにだんだん体が街に馴染んでいく感じが面白かった。街はアートの夢を見る。一夜限りの饗宴が六本木を彩る。金持ちの外国人と夜遊び女と、どっかの若社長とアートファンがそれぞれの思惑で六本木を歩く夜。そんな夜。芸術祭っていうか、今日ここでしか明かせない夜を過ごすイベントって感じがした。