たぶんこれは完全にフィルム装填時のぼくのミスだと思うんだけど。
少し前にコンパクトカメラで撮影したフィルムを現像したら、そのとき撮った像に、別のいつだったかに撮った像が重なって焼き付けられていた。
いわゆる、多重露光というやつ。
不思議なのは、その「別のいつだったかに撮った像」というのを、いつ、どこで、どのカメラで撮ったのか、さっぱり覚えていないということ。
ぼくはいつも撮影済みのフィルムにマスキングテープを貼って見分けが付くようにしているので、撮影済みのフィルムを単に再装填してしまったという凡ミスではないような気がする。
かといって意図的に多重露光するために再装填した記憶もない。
じゃあ、この重なった像はいったい何なんだろう。
写っているものは見覚えがあるものばかりだから、自分で撮ったものであることは間違いなさそうなんだけど、うーんやっぱり思い出せない。
シャドウの部分は後で撮影した光で上書きされて、ハイライトの部分だけがまるで幽霊の悪戯のように写真を侵食している。
でも、そのうちの何枚かを試しに焼いてみると、これが意外と悪くなくて、これはこれでアリなんじゃないかと思えてしまう。
どうせ酔っぱらってて記憶にないとかそんなことだとは思うけど。
覚えてないものは思い出せないので、とりあえずこのネガは光の幽霊の仕業ってことにしておいて、粛々と自分の写真として扱わせてもらうとしよう。